皿洗い考/salco
 
}こゞる
六枚あらへば指われる

千枚あらへば髪(ぐし)はぬけ
水ぬれ奴婢の夜ふけて
良人は細をわすれてゐ
子どもは母をわすれてゐ
たあれもをらぬ台どころ
儂はいつたいたれですか

壱枚あらへば片てまの
弐枚あらへばふた親に
参枚あらへば子がそだち
四枚あらへば嫁にやり
五枚あらへば里がへり
六枚あらへば孫さはぐ

萬枚あらへばお婆さん
泣きぬれ奴婢に魔のさして
亭主の寝くびかいた夜
ぬれ手のあかを洗ひます
まう終つたよとつぶやきつ
あらぬ手のひら見てゐます

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