もみじ悔いたし鐘は無し/ただのみきや
 
ドル
だがちょうど良いところで二頭は左右に別れてしまった

いつもの通り新聞を配り終え
家に戻って仮眠をとる
朝食の席で妻と息子にシカの話をして
ぼやけた写真を見せては自慢をする
 「シカが下りて来るならクマも来るぞ」

暫しボンヤリの営業車
今朝の光景が浮かんでは
心切なくなってくる
二頭は無事に再会できたのか
住み慣れた山に帰れたのかと

だがあの時 一瞬だけ思ったのだ
後ろからシカをはねとばし
知り合いのレストランへ卸したら
少しは稼げるかもしれないと
だから余計に 切ない気分

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