練乳/夏美かをる
「お母さん、コンデンスト・ミルクっておいしいね!
明日もまたこれ作ってね!」
娘達が練乳をお湯で溶いた飲み物を啜りながら言う
「いいよ。
お母さんも子供の頃 これが大好きだったんだよ」
東京の下町に住んでいた頃
練乳の赤い缶は父がパチンコに行った日にしか
お目にかかれない特別なものだった
家計は決して楽ではなかったので
父が出掛けたのはせいぜい二か月に一度
沢山勝った時には、景品がいっぱい詰まった
紙袋の上から顔を覗かせていた練乳の缶 三つ、
ちょっとしか勝てなかった時にも
袋の中にちゃんと入っていた練乳の缶三つ、他の景品はなし!
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