刹那い/望月 ゆき
 
のおかたは
ていねいに
かたむいて
わたくしへと
こぼれる


  わたしはそのとき
  じゅうぶんに
  あなたのなかにしみいっておりました
  ので
  あなたとともに
  ともに
  散りおちたのですよ


ならば 
どうしてずっと
ずうっといっしょに
いてくださらなかったの
です


  あなたのなかは 
  とてもここちよかったのです
  けれど
  どうしてもわたしは
  あなたの毛穴
  から  
  しゅうしゅう、と
  空にのぼらなければならなかった
  
  そうしてそれは
  すべて
  あなたを
  ふたたびうつくしく
  咲かせるため
  と
  したなら


水、のようなおかたは
舌の上で
ていねいに
そう語ると
すぐにまた
わたくしの
あしもとふかく
ふかく
へと
こぼれて
消えていかれた



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