刹那い/望月 ゆき
 
かつて
わたくしは
花、だったのですよ
よろしければ
咲いてみせましょうか


言うと
水、のようなそのおかたは
しなしなとゆびを左右に
ゆらして
ていねいに
それをこばむ

   
  いいえ
  その必要はありません
  なぜなら
  そのことにつきまして
  じゅうぶんにぞんじております

  あなたが
  花、だったそのとき
  あなたはずっと
  わたしのなかにひたっておりました
  から
  ひたすら、
  に


それならばなぜ
あのとき
わたくしの花弁を
むげにしたのですか


問うと
水、のようなそのお
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