夜たち/はるな
 

歌いたくても歌えないよる
うたうたいは血と指で絵を描く
石のうえに

詠みたくても詠めないよる
詩人は枝をうちならす
懐かしいリズムで

描きたくても描けないよる
絵かきは文字をならべる
極彩色の絵の具

死にたくても死ねないよる
人間はどうしてか息をつないでいる
だれにもおそわらなかった
だれにも教えることのできない
一人ぼっちのやり方で


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