風鈴屋/そらの珊瑚
 
砂埃の舞う通りを
風鈴屋が行く
わたしは手をとめ
格子戸の隙間から
そっとのぞく

リヤカーを引くのは
妙に血色のいい男
ほんとうは人買いなんだと
おかみさんが言う

色とりどりの無邪気な風鈴たちが
夏の光にさんざめく
人の心にある空洞は唄わないけれど
風鈴の空洞は美しくうつろを唄う

わたしも
いつか売られてゆくんだろう

風鈴いっこの等価として


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