あるミーハーの独白/汰介
 
けてくれるものだから、動き難くって仕様がない、そんなものがらくただなんて、まあそれは、お互い様か。
ねえ、僕はだらしが無い、と同時に同じだけ冷酷だ。
こんなありきたりな言い方にぺっ、と唾を吐きかけようが、僕の知った事じゃあないんだ。
そしてその隙にもっと薄い板ガラスを、
君の人形の柔らかい肉の細胞と細胞の間にそっと忍び込ませ、
そこに書かれた言葉が発芽してその経過を夢想する事、
――それが予想した以上に想定した通りだった時、
一人不意打ちでほくそえむのを何よりの楽しみにしている、
そんな人形同士の恋なのだと思う。
それは影を言葉で引き寄せて、その曖昧な輪郭を、湿り気を、体温を、
ひんやりとした空気中の母胎の中で育てているのかも知れない。
そこに愛は無いかも知れないが、愛と言う言葉はあるんだ。
それは、筋肉を僅かに痙攣させるだけの力はあるのかも知れない。それで十分だ。
人形なのだから。甘えたがりで臍の緒も切れてはいないけど。
でも直に、自然と切れるよ。砂漠の砂が風紋をつくるように自然にね。
さあ今日も、僕は出かける事にするよ。
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