あるミーハーの独白/汰介
僕は、古新聞を湿らせた匂いのような陰鬱な曇った早朝、
じりじりと迫る、悶えの空気圧に堪えながら、その日初めての煙草を吸った。
「今日は雨が降るな」
ぼんやりとそう思った事に限って当たった試しは、いつも無かったが、
その当たらない予感は、僕を十分に苦しめた。
実際には体験していない筈の、しかし確かな記憶。
それは、生々しく気味の悪い甘さを僕に感じさせるのだった。
そして、顕微鏡に使う板ガラスに貼り付けられたような、暗い密かな囁き。
それは、救いの無い懐かしさで、存在しない過去へ吸引しようとするのだった。
それが、ゆっくりとした速度で粘液に塗れながら僕を締め上げようとした所で、
僕
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