答えがない/蒼木りん
白い犬は死んでしまった
白い家の二階の窓から
猫が外を見ている
家からは出たことがなく
毎日
工事現場の音や
散歩する人や犬や
通りすぎる車や
ときどき来る鳥の影に
なんとなく
触りたいと思っている
どうして
この家の人と同じ『言葉』が
喋れないんだろう
どこからか
微かに
声が聞こえるのに
それが誰だかわからない
白い犬とは仲良くなれなかった
ただ
もう追いかけられることも
吠えられることもない
家のなかを少し自由に歩けるようになった
もっと遊んでほしい
もっとわくわくしたい
風に吹かれてみたい
君は『だれ?』
僕
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)