車窓から/中村葵
 
すれ違う街の灯りの
ひとつずつに誰かが生きている

つらいことも苦しいことも
嬉しいことも悲しいことも
誰にも言えないことも
あの灯りの下に集い

確かに存在するのに
永遠にそこに行くことはできない

すれ違ったのは一瞬
ただひとり
東京駅に着いた時の寂しさに
通り過ぎたいくつもの灯りを思う

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