宴のあと/三田九郎
 
くたびれたスーツに

アルコールの臭気をまとい

頭髪はやや薄く

終電近くの電車に揺られ

汗の浮いた首を

大きく揺らしている

悲哀を帯びた

男と女

最寄り駅まで

瞳を閉じ

うなだれ

今夜は何を思うのか

こんなふうにはなりたくない

そう粋がっていた昔は遠く

僕もまたスーツで揺られ

酔っている

昔の僕も間違ってはいないのだ

けれども少し

こんな僕らを擁護したくもなる

サラリーマンもなかなかなんだ

くたくたなみんなが

なんだか誇らしく

愛らしく思えてくる

僕は駅までもう少し

それではみなさん、今日もお疲れ

無事に帰れますように

そしてまた

明日も一杯
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