宴のあと/三田九郎
くたびれたスーツに
アルコールの臭気をまとい
頭髪はやや薄く
終電近くの電車に揺られ
汗の浮いた首を
大きく揺らしている
悲哀を帯びた
男と女
最寄り駅まで
瞳を閉じ
うなだれ
今夜は何を思うのか
こんなふうにはなりたくない
そう粋がっていた昔は遠く
僕もまたスーツで揺られ
酔っている
昔の僕も間違ってはいないのだ
けれども少し
こんな僕らを擁護したくもなる
サラリーマンもなかなかなんだ
くたくたなみんなが
なんだか誇らしく
愛らしく思えてくる
僕は駅までもう少し
それではみなさん、今日もお疲れ
無事に帰れますように
そしてまた
明日も一杯
戻る 編 削 Point(3)