何も言わなくたっていい/三田九郎
 
語れば語るほど

あなたへの思いが

色あせ

別物になってゆく

何か言おうと戸惑うたび

ワインの酸味がきつくなる

ことばになること

ならないこと

しなくてもいいこと

あなたとの無言の時間が

戸惑うわたしに

ことばのいらない幸福を差し伸べ

静けさのうちに

どこまでも優しく

抱き寄せてくれる夜
戻る   Point(2)