キイー!/あおば
を立てると
やおら
キーと鋭い音を立てて新聞配達の青年が自転車の後輪を軋ませて停車する
この辺りではエンジン付きのバイク配達ではないようで
無骨な黒い自転車が元気良く往来しているところを見ると
この辺りはまだ平成の御代ではないようで
道理で道行く人の顔に自信が漲っている
おい! そこ行く青年 などとくだんの弁士も平気で声を掛けるので
私のことかなと顔を向けたが視線の先はもう少し遠いようだった
とすると私の時代でなくて20年くらい前かな
クーと腹が鳴って我に返る
焦げ付いた鍋の底には寝惚けた色のうらなりカボチャが美味そうに薫る
これからが私の時代ですよと言いたそうに薫り
中身の黄色も一段と冴えて光る
駄洒落ですねと声を掛けた
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