運命/三田九郎
 
路上に転がっていた空き缶が

走り去るバイクに跳ね飛ばされて

僕のところへ転がってくる

乾いた音を立て

凹凸の目立ついびつなからだで

(ぼくには行き場がない)

夜の冷たい雨に打たれて

カン、カン、

生気のない嗚咽のような音が響く

空っぽでいて現代社会の哀しみを

凝縮させたような痛々しさを帯び

誰にも拾われず

拾われることを期待などしてもいない

今朝もあの辺に

身を晒しているのだろうか

都会に溢れる人間たちの

真実のひとつを彼に見た
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