旋律/三田九郎
 
ピアノの強い旋律に耳を委ねる

他には音の聞こえない時間

僕はどこか自分の知らない自分へ

心の底のほうへさらさらと落ちてゆく自分を感じる

自分というものをどう扱ったらいいかわからない

不安が泥酔後のようにこみ上げてきてたまらなくなるとき

ピアノの強い戦慄が

螺旋階段をくるくる転がる小石の面持ちへと僕を誘う

他には音の聞こえない時間

あらゆるものが思慮の彼方へ消え去ってゆく
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