無言/三田九郎
 
人間どもの

情念の切れ端が

いちいちこの世に刻まれてしまったなら

この地球も

いつしか宇宙の隅々までも

僕の狭い部屋や

遠いどこかの山村までも

情念で切り刻まれてしまう

言葉というものが

いちいち説明とか

心情の吐露とかいったものに使われてしまったなら

ありふれた定型で

世界中が埋め尽くされてしまう

語る言葉

語るべきもののない人と

どこまでも無言で

愛し合っていたい
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