夜と白/木立 悟
中身の分からぬ箱を
幾度も運ぶように夜は来て
色を静かに塗りかえる
重ねられた隙間が鳴く
地球の裏の蝶
緑へ落ちて
陽を弾じく影
あたたかな不安
永い永い数秒の夢の
数え切れない繰り返し
夜のふるえが止むと同時に
水と毛の雨が通りすぎ
知らない場所を美しくする
吊るされた男は何も見ない
白い径
白い頭の子ども
坂道を
のぼり来る潮の音
野と径の境には
壊れた灯が並んでいる
影 水に濡れた跡
どちらともつかぬまま
たがいちがいにつづいてゆく
照らすもののない角を曲がると
白い匙が落ちていて
打ち寄せるかたちと
ふるえの行方を指し示している
どこかへいったと言い
どこへもいかぬと言う
その窓辺の明るさが
径をわずかに浮かべ
右手の花と
左手の葉をそよがせてゆく
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