果てぬ夢なれど/岸かの子
 
この海原の先の先には
哀しく微笑む女(ひと)がいる
手を伸ばす先の先
来い、と言えばささやかに
哀しく微笑む女(ひと)がいる
陸と海の境目に
永遠の君は雲を千切りながら
僕を待つ
町並みの灯りも乏しく
旅立つ君は笑いながら
哀しく微笑む
この舟に名をつけよう
微笑みながら哀しまないように
涙の痕も残らないように
貴女が好きな金木犀と
彼岸花をたくさん入れて
沖へと
沖へと
差し出しましょう

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