蜘蛛は見ていた/朧月
蜘蛛は謙虚だ
もっとたくさんの空間を
占領したっていいのに
わずかな場所に住んでいる
ある日物干しざおの上にいたので
なにをしているのかきいたところ
子供をうんでいるという
次の日
うす青い小さな蜘蛛が
物干しざおから糸をはっていた
おまえも巣をつくるのかい
私はきいたが
蜘蛛のこどもは糸をはくのにいそがしく
なんにもいわなかった
きづけば
私の手足にも蜘蛛のいとがくっついている
その先は
ずうっと遠くの空へつづいていた
ああそうか
いきているものは
みんなつながっているのか
青い蜘蛛のこどもは
そんな私のことをじっと見ていた
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