明日もないし帰る場所もない/ホロウ・シカエルボク
暑い国の銀行で爆弾をシャツに隠して自爆した男の生首を抱えて泣いている女の言葉は誰にも訳せないだろう
俺はほんの少し飲んだ生ビールのせいで生まれる微かな頭痛を覚えながらそんな動画を見ていた、リクライニング・ソファーに身体をあずけて
火薬の力で引きちぎられたのだろう、男の首の根元は観賞用の魚の艶やかなヒレのようで、そのヒレはちょうど歩道と車道の間の縁石に寄り添うようにしっとりと赤くて
彼はそのヒレで、爆心地からそこへ泳いできたのだ、呆然なのか恍惚なのか、釈然としない表情を顔面に残して
石で出来た銀行の壁の一部が破壊されてその煙がいつまで経っても消えずに残り続けて…生命にかけられる毛
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)