虚しい夜に描いた詩/ただのみきや
ては飛んで行ってしまう
ブランコから降りられない人がいる
昨日の自分が信じられず
今日の自分が敵となる
一体何時からだろう同じところを行ったり来たり
だけど停止するのが怖いのだ
下りて 足を地につけて歩き出すのが怖いのだ
夕暮れ時を認めるのが怖いのだ
言葉を舌の上に書いてはまた消してしまう
発してしまうこと 後戻りできないことが怖いのだ
自分を背中から抱きしめようとする人がいる
誰を愛しても実は誰を愛しているわけでもない
自分の影を追い続けていることに気がつかず
井戸の底を 誰かの瞳を覗きこむ
逃げ水を追うような人生だ だが
そんな相手を愛してしまう者もいる
悲劇と喜劇はコインの裏表
言葉にならないその思いを
切子細工の詩に託す
戻る 編 削 Point(27)