鉄塔/紅月
 
がからからと反響していた
あおい戸籍の改行のはざま


妊婦もいない空白から
間違ってうまれてきた四本指の奇形児たちが
あふれだしたそばから吐血して死ぬ
彼らの遺骸にくちづけては(ことづけをして)
熱に浮かされたようなまどろみのなかで
幻視におぼれる孤児は風にあそび
流れる川の構造を知った六日目の朝には
事後の鈍痛のさいわいだけがつのった


鏡面を音もなく春の水鳥は裂いて
そのあわいに逃げ隠れていくから
遺された話者の血の流れだけが
からの窓辺にくるくると残響しつづける
墓に刻まれた名は異語でえがかれていたから
骨だけを看取ることすらできない
あやまちの帰結がここならば
ひとりだけが正しいこの街もやがて
あおい炎のなかに閉ざされるから
それまで
赦すわけにはいかない
(赦しを請う系統樹)
行方の知れない血が乾ききったあと
捨て置かれた骨を煤に汚れた野犬が咥え
あたらしい墓穴に横たえてから
あたたかい土がかけられたときようやく
ひとすじの婚姻の繭のなかで
肉塊がふるふると動きはじめるのだろう

 
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