曖昧さをかかえて/かんな
したなら
なれやしないんだ!という現実がきちんとワイシャツのようにたたんであった
無理矢理にキスされた酒臭いにおいが漂う
どこに向かいたい
一時の感情をなぐさめるためだけの性交なんてしたくはない
拒んだ
拒んで拒んで拒んで夜を喋りあかした
季節が急速に冬に向かっているような気がした
寒くないの
寒くないよ
抱き合う必然性などないのだ
きみは申し訳なさそうな表情をしてなんだか言い訳をはじめた
それは
つまらない小説の一行目のような文脈で
がっかりして笑って笑えってといってきみを笑わせた
小鳥のさえずりが鼓膜を打ち始めた頃
帰り際
ありがと―
と言っては頬にキスをしてドアは閉まった
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