家族の食卓/角田寿星
そして暗転。終劇を盛りあげる安っぽい交響楽。
姿見にうつった粉々にくだけ散る弾痕。私は唇についた真
っ赤なソースで紅をひいて微笑んでみせる。
おかあさまが わたしをころした
おとうさまは わたしをたべてる
私は食べるテレビの光に煌々と横顔をてらされて。ライオ
ンのように牛のように断崖を襲う波濤のように。私は自問
するずっと空腹でいることはいったいどれほどの罪悪なん
だろう?私は食べる時空をも引きよせる白色星のように生
れた時から飢え続けていたから。ごちそうさま。返事はな
い。人形の父。人形の母。人形の兄。みんな腹から詰め物
を出したまま椅子の上で俯いている。私は銀のフォークで
十字を作ってみんなのお墓を建ててあげた。
テレビを消してランプをかかげてゆっくりとドアを閉める。
みんな おやすみ。
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