アンモナイトをおぶさって/ホロウ・シカエルボク
 




爪先が深く沈み

濡れた砂が潜り込む

薄曇りの空の下

静かに呼吸している海は

黒に擬態している

青のような色をしている

ひとの姿はなく

ひたすら尊い音がして

これはまるで

宇宙だ



波は身をこごめた

獣のように大人しい

ひとたび口を開ければ

その牙は果てしない

突堤に向かって歩いていた

そこに

何があるのかも分らずに

時折

わずかに見える月の下

その光が目印のように照らすところへ



冷えた重たい風

世紀の記憶がのしかかるよう

なまじ呆然とした
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