夜の鯨/ねことら
 
ている。
冷蔵庫のうごく音と、換気扇のまわる音がする。
すべて黒と灰の線で画は構成される。
まるでおおきな石の球のなかにいるようで。


胸の奥がつめたくて、そこから四肢の先までが静かにしびれている。
なにかを確認するように、きみの衣服を脱がそうとして、
けれど何枚、剥いでも剥いでも、
やわらかくぶよぶよしたものがとりのぞけないでいる。
遠い火をみるような距離で見つめ合っている。


ぼくらの薄い胸や腰は、よるのみずのなかで淡くうかびあがる。
どこまでも燃えて、汗やいろいろなものと一緒にやがて液体になって、
このよるとまじりあっていく。
僕はしなびたものをきみの乾いたものにそっとあてがう。
そこにはきっとなんの意味もなく、なんの優しさもないけれど。
きみはしずかに声をあげる。夜に遠くで鯨が鳴くような、さみしい声で。












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