世界のなまえ/梅昆布茶
 
遠い海を思う日
すべての手足が色あせて見えた
博物館に展示された金飾の棺のように
自我という幻が何かを閉じ込めているようだ

風化させるままに人生を問えば
その答えもまたかさこそと音をたてる
千日の昼を生きて夜に裏切られる
質問箱はもういっぱいで君の返答を待っている

回答者は列を成して質問という配給を望み
疑問という貨幣はとうに錆びついてわずかに
権力者のレリーフだけがしるしを残す

街路という街路にはひしめきあう流行が
すばやく目配せしあって夜に消えてゆく

遠近法の消失点にはただ疑問符だけが風に揺らいでいる

今日もまた素敵なゆで卵をくつくつと音をたてて
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