ウォーターフロント/渡邉建志
 

その二つのタワーは互いに凭れ掛かって、上のほうの一点で触れていた。
どうしてこんな風に見えるのだろう、雨の中で歪むのだろうか。
わたしたちも霧雨の涼しさに打たれていた。
東京タワーの左は海で、右のとても高いビルはウォーターフロントに立っていた。
海の中で、建設中の東京ドームのような円形競技場がぐるぐる回っていた。
あんなものを作っているんですね、とわたしは隣のおばさんにはなしかけた。
そこは一部の人は知っている眺めのよい桟橋で、カメラを持った人たちが
何人かいた。桟橋の先の石の突起物の上のぎりぎりまでわたしは進み、
そこでカメラをかまえていたけれど、東京タワーは海の向こうで小さく
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