月光文字/木の若芽
「月光文字」
木の若芽
秋の月に照らされて
月光だけで詩を書きましょう
人は寝静まり
虫の声のほか聞こえるのは
時計の音
遠い風の音 それから
だんだん聞こえてきた月の声
ぽろん ぽろり
弾力のある光のしずくのように
心の中にころがってくるのです
なぜかこの光のしずく、月の声は
生きているものにも死んでいったものにも届いていると
そんな気がする深さがあります
月光だけで文字を書くと
ノートの行間までは見えずとも
野性の本能で書けるようです
見えないものを照らしているこの白い光
見えないものはこの時藍色に浮かび上がります
乳化した藍色の気の世界
それが望月の深夜の世界です
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