そこから流れるものは見たことがないくらい赤い/ホロウ・シカエルボク
俺の牙は何故歪み
俺の牙は何故曇る
俺の牙は何故呆け
俺の牙は何故縺れる
ほら、幼い日、あの廃工場脇の
忘れられた路地を自転車で駆け上がるとき
どうしても気にしてしまう
ペダルとチェーンのイントネーション
そんな違和感が
また胸の奥から
(ふりだしにもどる)
俺の牙は何故狂い
俺の牙は何故猛る
俺の牙は何故嗤い
俺の牙は何故尖る
暴走する思春期の季節、生身をえぐるように
校庭で露呈した誰かの失恋の
血のような夕焼けの下の涙
訝る騒ぎが鎌首をもたげる
もう名前も思い出せない
(もう、そこへはもどれない)
情熱はいつも
エンディングロールから始まる
燃えやすいものが
すべて燃え尽きたあとに
本当に
燃やさなければならないものが残る
固形燃料のようには燃えあがりはしない
たくさんの蓄積と
たくさんの手札と
たったひとつの理由
たったひとつの理由
尖った牙の先は
俺の筋張った身体に食い込むのだろう
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