月極のひと/たま
 
だと思う

看板屋さんに憧れて
美術の先生にレタリングを教えてもらった
ケント紙をB1のパネルに水張りしてポスターをつくった
ドラッカーの「断絶の時代」
社会にでてほんとうに看板屋さんなった
親方に初めて仕事を任された
月極さんの駐車場だった

失恋をして
看板屋さんを辞めた
どこか遠くへ行こうと思った
東京ならかっこいいと思って
十九の春
都会の案山子になった
ひとりぼっちは好きだったし
品川にも、月極さんはいてはったから
ぼくはなんだかうれしくて
ここで生きようと思った













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