ひかり めぐり ?/木立 悟
真昼の緑の幽霊が
背を向けたまま近づいてきて
径との境に立ちつくし
街を見つめ 消えてゆく
別のはじまりに みなもとに
柱の列は照らされている
水かこむ枝葉
ふたりの迷い子
光に閉じた光の目
むらさきがひらけばむらさきになり
すみれは響き
すみれにこぼれ
蒼い裂けめ
死んだ海と
死んだ地のあいだの径を
ざらざらと吹かれ
朝を忘れ
何番めの空から落ちたのか
跡の付いたやわらかなもの
降り来るはざまに
さらに降り来る
遠い陽の地
午後の崖の径
岩を削り 岩を描く火
手をひらく ゆらめく
手をひらく
覆う 在る 覆う 在る
雪と霧
灰と鉛と白の塔
棄てられた地の
波のなかに立っている
夜の終わりに朝は無く
灯のためらいがひたす径
とまどい うつろう野の背(せな)を
風はめぐり かがやいてゆく
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