サングラスのキューピット/芦沢 恵
食べこぼされたクッキーのように
沈み込んでひっそりと
片付けられる時を待っている
花壇があった
二人で作った花壇
14と14の春夏秋冬
花を咲かせ 花を散らせて
20年前にあなたは
家族と共にこの地を去った
あの時からわたしも風雨にさらされ続け
時間は止まらなかった
角が丸く風化した
ブロックのかけらを一つ
ハンカチに包んで車に戻る
知らぬ間に大きな車が
後ろに止まっていた
私が戻るのを
黙って待っていてくれた
深く一礼をした
スモークガラスの向こうに
サングラスのキューピット
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