ギブ・ミー・シェルター/テシノ
ひもにしがみついて窓から中庭を見たら
黒い鳩のなかに白いのが一羽だけいた
それで思いついた
そうだ、透明になればいいんだ
昔叱られたときみたいに
誰からも見えなければ誰も怖くない
コンコン、コンコン、入ってますかぁ?
いませんよー、だぁれもいません
ほぉらいた、うーたんここにいたぁ
お母さんにはわかるんですよーだ
うーたんがどこへ行っても
いつ誰と何をしてても
お母さん、全部知ってるんだからね
あれ?どうしたの
友達に声をかけられた
いやぁ、鳩がね
わたしは鼻声で答える
一羽だけ白いのが悲しくてさ
ええぇ?…ああ、屋上いこっか
なんとなく並んで歩く廊下は
もう真空じゃなくなっていた
どうして見つかっちゃったの?
わたし、透明になってたのに
だって、見えるよ、と友達は笑った
それなら服は脱がなきゃダメなんじゃない?
チャイムの音を聞く、空が近い
どうすんの、教室に荷物置いてあるのに
これじゃわたしが透明じゃん
友達がフェンスに寄りかかってぼやく
わたしは中を確認してから
そっと鞄を閉じた
空が近い
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