春の約束/永乃ゆち
っと似合うだろう。
私はその雑貨をもう一度手に取って、レジに向かった。
「生きよう」
春の約束は途方もなく遠く感じるけれど。
大丈夫。生きていける。
世界で一番大好きなあの人の。
あの笑顔を。
あの細い指を。
華奢な体を。
ゆらゆら揺れながら笑って見ていたい。
「プレゼントで」
そう言って、桜色の和紙に包んでもらったそれは
なんだかずっしりと重たく感じた。
これが私の命の重さ。
これが私の命綱。
こんなふうに春を待つのも悪くはないな、と思った。
そうして秋風に吹かれながら、春を抱いて帰った。
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