仲秋の夜に/ぎへいじ
月よ お前様は 自ら輝く事も出来ない身の上だと言うのに
借り物の服を着て
ものまねの明かりの下に 私を座らせて この めくるめぐる思いを
ただ 寂しいよ と一言だけ 言わせて 癒やしてしまう
月よ お前様よ
借り物の服も 明かりも 奪われ様としているのに
その光と影の境界線に 私の心を誘い込んで この どうしようも無い思いさえ
私に かなしいよ
と一言だけ言わせて 慰めてしまう
古い便箋の上に置かれた
コーヒーカップを思い出す
少しだけずらして
そう ほんの少しだけ心を動かして
その真新しい白さと色あせた
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