call/紅月
 
ぐ螺旋に濯がれ
他愛もなくふやけてゆく視界は
葉の抜けゆく秋の大樹のように
彼方にたかく枝を拡げたまま


(かたちない独房の
半透明にすけた檻の隙間を
空欄に入る記述だけがすりぬけてゆく)
錆びた蝶番がこつこつと鳴き
打ちつけられる利き腕は骨の/古枝
いびつな石畳のうえに立ち尽くしながら
反響する雨煙の螺旋の
呼び声にうすい鼓膜をかたむける
ひとりでに震えるくちびるが
物言わぬ系譜の勾配をくだりおちて
はなばなの潤いに分化しゆく複眼の
丸い卵塊だけが宙でくるくると廻りつづけている

 
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