秘密の場所/殿岡秀秋
 
家をでたまま
中学校への道をそれて
雑木林にわけいる
ハンターが通るだけの狭い道を進む

二股に分かれて獣道に入る
林の奥の日光の柱が立つひとところ
草むらで鞄を枕に
制服のまま寝転ぶ

そこだけ木々の枝が途切れて
まあるく浮かぶ空では
甕が倒れて雪がゆっくりこぼれる
熊が穴から出てくる
猿の尻尾が木の天辺に届く

今頃中学校は英語の授業だ
教室に座っているとどこからか
棘が飛んでくる
廊下を歩くときも胸に刺さる

テストが近づくと
学校が燃えてしまえばいいとおもう
あるいは消しゴムで
自分を消したい

林の学校の白板は空
青いキャンバスに
白い絵の具が造形する
柔らかなぼくの居場所

空が吐く息にあわせて
膨らますぼくの胸から棘が抜けていく
手を伸ばすと八手の葉がかゆい
起き上がり周囲を見回し
傷が癒えかかった犬のように
よろよろと歩きだす

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