ふたりのこども/朧月
 
この世界の音からのりおくれて
はたして世界に音はあるのだろうか
残らない記憶には意味がない
そう賢者はいった

みてわからんもんは きいてもわからん
厳格な祖父の口癖は
酔えばサイフの中のレシートよりも
軽く風にとんでいくだけのものだった

この手にはなにもない
つかめるものなんてあるの?
いとこが二人目のこどもをうんで
ちやほやされない上の子がきいてきた

こたえは

うまれてしまった

やっとお宮参りをすませたその子は
ああんと顔をゆがめて母親から身をよじった
次の瞬間ほほえんで
納得したかのようにしずかになった
戻る   Point(3)