ふたりのこども/朧月
この世界の音からのりおくれて
はたして世界に音はあるのだろうか
残らない記憶には意味がない
そう賢者はいった
みてわからんもんは きいてもわからん
厳格な祖父の口癖は
酔えばサイフの中のレシートよりも
軽く風にとんでいくだけのものだった
この手にはなにもない
つかめるものなんてあるの?
いとこが二人目のこどもをうんで
ちやほやされない上の子がきいてきた
こたえは
うまれてしまった
やっとお宮参りをすませたその子は
ああんと顔をゆがめて母親から身をよじった
次の瞬間ほほえんで
納得したかのようにしずかになった
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