色を嫌うレンズ/まーつん
 


あるところに
色を嫌うレンズがあった

それが愛したのは形
そして光と影の
バランスだけ



そのレンズを通して見ると
総ての花が おしゃべりをやめた

春の日差しのシャワーを頭から浴びて パチパチとソーダみたいに泡立ちながら
早口でまくしたてる タンポポの黄色

初夏の蒼穹からポタリと落ちてくる瑞々しさの滴を 口いっぱいに含んで
じっと頬を膨らませて 見つめ返してくる ツユクサの青

冬の寒さを その香ばしく爆ぜる 地の底の熾火で押しのけて 
怒り、暗く燃えながら 網膜を焼きつくす ツバキの朱

例えば ある晴れた日に 頭上から降り注ぐ
あく
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