野いちご/月乃助
 
{引用= 

鹿に小石をなげる

それを、食べてはいけないのです



野いちごに口を赤く染める おまえは
なにも知らず


動物の本能を ためされる
※線という 残忍な審判



紫蘇の葉も
茗荷の実も
栗さえも
ここでは、口にすることをゆるされず、
被爆の森は 黙したまま
生のいとなみを ささえる

人間の知恵は、驕りの果て
私もまた 心の灯火をためされる
小さくなったそれを
消してしまわぬように



いつか 時が来る



きまって
下弦の月の 美しい夜明け
私は、小さな森を生み落とす
黎明の 月明かりのした

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