ものがたり/yo-yo
 
なたの指が
風のようだと思った

息がきこえる
深いため息と咳ばらい
ただそれだけが
ひとの一生だったかのように
長い物語ははじまり
長い物語はおわる

本を閉じると
あなたはすっかり年老いて
風のようにそっと
その部屋から出てゆく

ぼくは窓辺で
ただ風に吹かれているのが
好きでした


*

 「水の物語」

わたしたち
滴って
真夜中の水になる
乾いたコップをうるおし
夢のなかへ

水は落ちてゆく
肩から腕をみちびかれて
そして
温かな手となって

空っぽな夜は
とおい声で確かめあい
めくるめく
歓びも哀しみも
水の言葉で
語りつづける


まばゆさの方へ
滴って
わたしたち
新しい水になって
目覚める






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