ものがたり/yo-yo
「木の物語」
きょうもまた
あの木のてっぺんにいる
あれは多分ぼくだ
ぼくの知らないぼくがいる
忘れていたのかもしれない
ぼくがすっかり忘れていたぼくがいる
だから懐かしい
ぼくは手を振った
だがそいつは
だまって空をみつめている
空には何もない
木は知っている
みずからを語ろうとして
枝を伸ばしたことを
手さぐりの
その先にまだ
物語の続きがあるかのように
始まりはいつも
小さな一本の木だった
小さな手で植えられた
小さな椎の木だった
そしてぼくは
木だった
*
「風の物語」
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