ものがたり/yo-yo
 
 「木の物語」

きょうもまた
あの木のてっぺんにいる
あれは多分ぼくだ
ぼくの知らないぼくがいる

忘れていたのかもしれない
ぼくがすっかり忘れていたぼくがいる
だから懐かしい

ぼくは手を振った
だがそいつは
だまって空をみつめている
空には何もない

木は知っている
みずからを語ろうとして
枝を伸ばしたことを
手さぐりの
その先にまだ
物語の続きがあるかのように

始まりはいつも
小さな一本の木だった
小さな手で植えられた
小さな椎の木だった
そしてぼくは
木だった


*

 「風の物語」

本のページをめくる
あなた
[次のページ]
戻る   Point(7)