世界は淡雪のようなもので出来ている/高原漣
 
学舎で一番の秀才であるリヒテンシュタインの解釈によると、母親の窮極の愛とは

臍帯で赤子の首を締めてやることなのだそうだ。

あまりに深い愛に私は

慄然たる思いを隠しきれなかったが、

彼はその説を酒場の片隅で

壁に向かって三時間も滔々と語って聞かせていた。



今日もとても寒いが、私にはスキットボトルの中身が味方してくれる。

黒い人影が早足でゆき過ぎる

雪はこの街にも

やさしく降りしきる

降り積もった雪は暖かくなれば、

崩れて消えてゆく

It all returns to nothing……
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