世界は淡雪のようなもので出来ている/高原漣
学舎で一番の秀才であるリヒテンシュタインの解釈によると、母親の窮極の愛とは
臍帯で赤子の首を締めてやることなのだそうだ。
あまりに深い愛に私は
慄然たる思いを隠しきれなかったが、
彼はその説を酒場の片隅で
壁に向かって三時間も滔々と語って聞かせていた。
今日もとても寒いが、私にはスキットボトルの中身が味方してくれる。
黒い人影が早足でゆき過ぎる
雪はこの街にも
やさしく降りしきる
降り積もった雪は暖かくなれば、
崩れて消えてゆく
It all returns to nothing……
戻る 編 削 Point(2)