dialog/紅月
やがて
かたちのない雲は血に濡れ
こわばったまま冷たくなってゆくから
痩せほそるリュウキンカの丘に火は放たれて
あらゆる制約書が燃えてゆく秋
(こんじきの鱗粉が跳ねる、紅海、)
なにも聴かない
標さない
ただ原理だけがやまない
はげしく波打つ時雨のさなか
(僕の、)
目覚めたときいつもここに戻っている
立ち尽くしている
(目的などないから、)
最寄りの寂れた無人駅に
幾度もおとずれる赤錆の周回列車
身を投げるには浅すぎる空集合(灰色の電波塔、)
ともしびが届かないところまで
もぐるあわい幽霊へと手をかざす僕の
頬にあたたかな白蝶がとまった
初雪だった
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