誰もいない戴冠式/高原漣
 
小さな小さな茨の冠を、そっと頭上に載せてあげる

わたしの小さな王女さま。

剣も盾も兵隊もいないけれど、

黒く切り取られた空が

のっぺりと広間をみたしている


万軍!(サバオト)


可憐な号令ですべての空気が気をつけをする。

小さな王国の誰もみていない広間で

厳かなる戴冠式は行われる。

ミサ曲にあわせてうやうやしく戴く、枯れ草色の

小さな茨の冠を

Queen(おんなのこ)はとても誇らしげに

天使のように

悪魔のように

光のように

闇のように

美しく可愛く

Platinum(ぷらちな)色のウエーブがかった頭の上に

戴いている。


万雷!(サバオース)


喝采がここではないどこかに巻き起こる。

三千世界の白い鴉が祝福する、

小覇王がここに産声をあげた。
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