僕の夜/智鶴
 
霧の深い夜が沈む僕を抱いていた
月は狂いそうに
白く美しいままだ
君は濡れた世界を
碧く淑やかな瞳で燃やしていた

鳥達も眠りについたばかり
誰も知らない僕等の夜だ
月は暫く眼を伏せるから
楽になれるよ
薄明るいまま映り込むのは
嘘か、魔法か

夜の底で、君と此処で
何もかも間違ったままで
朝日がすれ違う僕等を白く照らすまで
幻の明日を夢見ていたいよ
君が此処で、夜の底で
何もかもは嘘だと言った
触れた掌が乾いて、崩れた
錆か、砂か
それとも未だ
何も知らない僕等か

始まったのは君の嘘と
追い掛けるだけの幻
深い霧が世界を隠して
狂い出したのは夜空と月だ

棘で目隠しをした僕も
夜も月も、君の嘘も
隠してくれよ
愛してくれよ

夜の底で、僕が此処で
君だけの夢を見ている頃
烏が一つ啼いて
もうすぐ世界が始まることを告げた
花が枯れて、君が枯れて
夜が死んで無くなっていくよ
何もない嘘に取り残されたのは
夜の影を慕う傷と
温もりを忘れた僕だ
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