Don't Know Why/木屋 亞万
りを頬に浴びながら
逃げていく月を嘗め回したい
朝は来なくてもいい
億劫と憂鬱と面倒と倦怠を連れてくるから
隣に誰もいなくていい
誰かを信頼するための準備も
裏切りに耐えられる精神も持ち合わせていない
涙の代わりに海水で手を塩に染めて
興奮の絶頂で死ぬ夢を見る
死んだ後は白い骨になって
一点の濁りもないすべすべの白骨となって
陶器の壺の中に納まる
運転手のいない乗用車で
真夜中の高速道路を走っていく
等間隔の黄色い電灯と
道の真ん中に登る月
助手席に置かれた私の骨
人のいない方へ向かって走り続ける
たのしみが待っているとわかっていても
踏み出していけない日がある
自分でもどうしてかわからない
音楽で耳を塞いで
零れ出る言葉を拾い集めて
紙に貼り付けるくらいしか
今のわたしにできることはない
戻る 編 削 Point(2)