妻に/殿岡秀秋
 
妻が孫の顔を見に泊まりに行った晩
ぼくは真夜中に目覚めた
喉が渇いているわけではない
トイレに行きたいわけでもない
なんで目覚めたのだろう
ふと隣を見た

そうなのか
きみがいないから
なんとなく目覚めたのだ

いつもは
テレビを観ているきみより先に寝て
朝まで眠る

とくに気にしていなかったが
きみがひとつ屋根の下で
息をしている安心感で
ぐっすり寝ていられたのだ

きみがいつ寝たか
気づかないまま
真綿の柔らかい布団のように
そばにいてくれるだけで
包まれて
ぼくは眠っていたのだ




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